不動七重滝は八重滝だったレポ2007/07/29

■ことのはじまり
 不動七重滝は一体何段滝か?
単純な疑問はこの滝の再訪瀑(2006/12/03)後の写真を見た時だった。
初訪瀑時は林道展望台から見た。
その後大滝の傍に展望台があり遊歩道が通じていることを知り再訪瀑した。
900段を超える階段を登り大滝の傍から写真を撮りながら滝の段数に疑問すら感じていなかった。
その後方々のHPの記載を見てまぼろしの最下段は両展望台から見えない滝であることを知った。
その上で写真に写っている各段を観察すると、まぼろしの最下段を入れなくても七段になっていることに気づいた。
何度も我が目を疑ったが確かに七段が確認できたのだ。
見えない最下段があるなら八段ということになるではないか。

■事実は?
 早速「奈良の滝」の第一人者デジマンさんに質問してみた。
デジマンさんはそもそも滝見に関心を持つようになった切っ掛けが不動七重滝であり思い入れも大きい滝だと自らのHP「奈良の滝」で書いておられる。
最下段が展望台から見えないこともご存知だったが、その見えない段を入れて七段だと思っているようで林道の途中からのビューも六段目と発表されている。
不動七重滝のことを更によく知る「気の向くままに」のtatsuoさんに訊ねると滝名称と実態が異なることはあっても不思議でないとの見解だ。

 デジマンさんに至っては泳いで行って確認しようとしたこともあったという。
一方tatsuoさんは次のようにも掲示板で回顧しておられます。
(2005年5月で遊歩道の吊橋が流出していたにも関わらず観瀑台まで行く事が出来ました。
そのついでに渓谷から最終段を眺めたのですが、岩の向うに落差3mの真の最終段が隠れている確信を得ました。
出来る事なら真の最終段を見てみたい、しかし泳いで行くしか仕方が無い・・
その後、何となくスッキリしないものがありました。
今年になってからデジマンさんとの掲示板のやり取りの中で 「2/3位は冗談ですが、今度不動七重に行く時は水着を持って行こうと思っています」 と書いたら、凄い勢いでデジマンさんが乗かって来ました 思いは同じだったのですね〜。)
しかし2人に共通するのは見えない最下段は7段目であると言う点だ。

 7段か8段か何とも割り切れない思いで意見交換するうちに3人で不動七重滝総合探検してみようではないかという方向に話が進んでいった。

■準備
 探検した結果が多くの人を納得させるものでなければ探検の意味がない。
写真を撮ってくることが最も有効だということで一致した。
解りきっている事も写真に撮ってくることからはじまる。
地形図では滝の総高さが約100mと読み取れる。
1・まず大滝の上段の写真、そして大滝の釜から下流の釜をみた写真。
2・最下流の沢から六段目(又は七段目)の釜に登って六段目(又は七段目)の滝といわれる滝と大釜の写真。
3・大釜から最下流の沢に落ちるまぼろしの滝(七段又は八段目)の写真。
4・できれば各段の落差も推定したい。
これらが揃えば探検の結果がでる。

■方法
 問題は2、3のカメラと三脚を六段目(又は七段目)の釜まで運ぶ方法である。
カメラや三脚を濡らさないで泳がないといけないのだ。
これはデジマンさんがあっさりと案をだしてくれた。
防水容器にカメラを入れ、浮き輪に載せロープで曳航する。・・というシンプルな方法。
防水容器はtatsuoさんが早々と探してきて自身の本年最優先課題と積極的だ。
泳いで岩場を登るには各自が鮎足袋や地下足袋を準備する事も申しあわせた。
沢登りの経験者には何でもないことが我々には初体験だ。
できるだけお金をかけないことと楽しむことも基本コンセプトだ。

■実行
 7月29日の実行日がやってきた。
どうやら我々の探検に全国の滝メグラーも注目していることがWEB上の情報で伝わってきた。
     
午前9時快晴の遊歩道入り口で落ち合った3人は全員初対面。
軽く自己紹介しあうがそれぞれのHPを通しわかっている。

■大滝展望台の撮影
 ここで渡渉装備に着替え大滝展望台を目指す。
本来なら大滝展望台から帰還してから渡渉装備が合理的なのだが2004年の台風で崩壊の吊り橋はまだ復旧されていないので遊歩道で前鬼川まで降りた直後に渡渉しなければならない為だ。
デジマン、tatsuo両名は鮎足袋、滝の思い出は地下足袋だった。
鮎足袋の性能は良く知られているが地下足袋は話にきくが実態は解らない。出費はどちらも≒約千円。 地下足袋は7月に「写録の旅人」の金さんと(しわがらの滝)に同行して試用した結果ハードな沢歩きでない足保護程度用途と確認していた。
前鬼川まで急降下の階段は鮎足袋、地下足袋には不向きなので注意しておりた。
前鬼川渡渉と左岸の川原岩場歩き300mは快適に経過、その先の900段越えの階段登り前に小休止。
                                   
階段登り口
2004年台風でごらんのような状態
ここでカメラ、三脚、水以外は川原岩場に残し階段登り開始15分位で展望台。
先客を含め10名くらいがそれぞれ撮影、談話、休息。
大滝上に二段を確認。
3段目の大滝は虹が懸っている。
大滝の下に4〜6段を確認7段目の落口が少し見えている。
この時点で六段目と言われる林道展望台から流れ口が見えるのは七段目だと確定できた。
この確認は林道展望台からのこの写真と照合することで最終確認できる。
大滝展望台での目的を果たし川原に引き返し更に100m程上流の最下段前の沢を目指す。
七段目滝の下の中央の岩が「岸壁」で大釜がこの上に載っている。 この岸壁を登ると大釜の前に出られるはずだ。

■七段目の釜に上がる
 作業はこれからが全員初体験の場面だ。
最下段前の沢で水泳装備を整える。
3人ともばらばらで装備というより川遊び着だ。
私は通常の半ズボンに長袖ティーシャツ、鉢巻き、手袋。
tatsuoさんは水泳パンツに半袖シャツ。
デジマンさんは水泳パンツ、長袖シャツ。
岩を登るのに手袋が無くていいのか気がかり。
デジマンさんが用意してきた子供の浮き輪に、tatsuoさんの用意してきた防水容器(どこにでもありそうな食品などを入れてパチンと閉めるプラスチックタックパック状(約25cm立方)容器)にタオルで包んだカメラを入れ載せる。
三脚はデジマンさんが用意してきた子供の平たい浮きにそのまま載せるだけ。
この二つの浮きをデジマンさんが用意してきた6〜7mm径の20mくらいのロープで繋いで、30mほど離れた七段目と解った釜が乗っている岸壁を目指し曳航し泳ぎはじめる。
岸壁の手前の岩まできた。あと半分だ。

写真提供tatsuoさん

 水は思った以上に冷たいが大滝に登って火照った体には心地いい。
tatsuoさんは水遊びが大好きというだけにサッサと先を行き岸壁にいち早く登ってしまった。
もたもたしている2爺に岩の上から指示し写るか心配の水中カメラで記念撮影までする余裕だ。
岸壁前まできた。この急流渡りに多少てこずる。カメラ転覆に用心!用心!

写真提供tatsuoさん

 なんとかカメラ、三脚を陸揚げして岸壁に上がって見て驚いた。
何とバレーボールができる程の平らな岩場が滝の前に広がっているのだ。
滝は豪快に30m落差はある大水量瀑で滝壷は25m直径はあるエメラルドグリーンが並々とした水を湛えているではないか。
この画面の半分づつが左右に広がった岩場のテラスなのです。

■まぼろしの滝は?
 やはりあった。
滝壷から右岸方向に向かった流れは緩い傾斜を巻くようにして


一段落ちて


弱くもう一段おちる



別のカメラでもう一度みると








二回程水頭をジャンプさせ落ちて



直ぐに岸壁の前方向に直角に流れをかえ



岸壁の直前で二個並んだ丸い岩の間をすり抜けて下流方向に再度流れを変えて下っていた。





全体の滝壷からの落差は、ほぼ岸壁の高さ(約2人分身長)とみていい。


 過去に撮った写真を眺めてみたらこのまぼろしの滝は林道ガードレール越しに見えていることが解った。
滝壷から右岸側に飛沫をあげて岸壁前に回り込んでいる様子がみえる。

その林道のガードレールがまぼろしの滝からもはっきり見えた。
注意深く観察していればまぼろしはまぼろしでなかったのです。


 各段の滝の落差をtatsuoさん、デジマンさんが推定してくれました。
不動七重の滝の落差は、
@6m+A1m+B35m+C4m+D6m+E15m+F30m+G3m=100m(デジマン)
@A7m+B35m+C3m+D5m+E15m+F30m+G3m=98m(tatsuo)

そして大釜の大きさ25mΦくらいだと思います。
地形図には三段目大滝の上流に滝のマークがありますが今のところ確認できません。
ずっと上流に錆びた吊橋があり対岸を川沿いに下れば大滝の上近くに行けそうですが渡る勇気がありませんでした。

■すばらしい世界
 まず皆さんにお伝えしたいのは
・七段目の滝のダイナミックス。
・次にその滝壷の広さ。
・そして何よりもその水の清麗なことです。
見て欲しいが大切に見て欲しいとも思います。
不動七重滝は不動八重滝だった。
そんなあほな〜?とかお前ら頭おかしいんとちゃう?とかいろいろ言って見てください。
私達はこの目で見て写真に撮ってきましたので検証してみてください。
林道からでも見えます。

■何故七重?
 このレポを書きながらず〜っと頭の隅から離れないことがあった。
何故不動七重滝と呼んだのだろうか?

・人目に触れない末端の八段目滝だから?
・大水量時には浮沈する不安定存在だから?
・信仰上の理由から?
・etc

などの理由から七重としたのかもしれません。
最終段の滝は特別の装備がない昔の人達でも十分確認していたはずです。
私達は先人の考えを知らずにただ単に「事実がこうだから・・」だけで発見などと言っていいのだろうか?
そしてこれから不動八重滝と呼ぶのがいいのだろうか・・・考えてみてください。

この探検をした3人のおっさんを載せます。

写真提供デジマンさん

 幻の最終段の探検を終えた3人のおっさん達は、最後に滝壷に入って童心に返って泳ぎました。
ユートピアとはこんなところなんだと実感したひと時でした。
最後にレポに協力してくれたtatsuoさん、デジマンさんありがとう。
tatsuoさんのレポ有ります。
<完> 2007/08/04記 滝の思い出kaidosun